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  • 2015.07.11 Saturday
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警察に捕まって、宗教を選ばせられる夢 

  何年か前の日記の中から「夢」を拾ってきた。

 その前の夜、身体の状態がよくないので早めに寝ないといけないという思いはあったが、寝たのは結局2時。すぐに眠りに落ちた。
 ふとベッドで目がさめたとき、快癒しているという感覚があって、気持ちよかった。睡眠独特の効能、身体のシンから癒されていく感覚。

 再び寝入ったあと、朝方、〈印象的な夢〉を見た。

 悪夢に類する夢だが、非常に興味を感じたので、ぜひ忘れないうちに記憶しようと、寝床の中で反芻するうちに、たちまち印象がぼやけてきた。
 もともとの記憶が具体的ではない。それぞれの部分の細部が非常にあいまいで、記述すると別物になってしまわざるをえない。だいたいいつも夢はそのようである。
(やはり言葉では記述できない)と感じた。
 記述するにしても、とにかくあらゆる部分が曖昧なのだ。 

思い出す限りの夢の内容
《どういう理由でかはわからないが、警察につかまっているようだった。
最初、キリスト教か仏教か、そんな項目をきかれて、どちらにも該当しない、というような場面があったような、なかったような記憶。
この段階ではまだ警察につかまっている感じはなかった気がする。自分は作品を書くために人生の貴重な時間を使いたいのだというようなことを言ったような曖昧な記憶も。
次の段階で、項目を選択することを迫られて、何やら宗教の名前が並んでいて、それを選ばなかったら、「懲役何年」かで、自由を奪われてすごすことになる。宗教など信じないし、必要もない、自分には時間と自由が必要なだけ。けれどもそういうことなら仕方がないと、何でもいい適当なのをひとつ選んだ。「天理教」だったような気がする。ただ、その場合、「まないた」だったか、の手続きが必要で、それは「まな板」の上に縛られて、どうするのだったか、身体に危害を受けるようなことをされることらしい、そんな危惧も感じた(ような気がする。とにかくはっきりしないのだ。)
書類を何枚かもらった。それには「どこそこへ」いくように書いてあって、まずどこそこへいって、次にどこそこへいく、と説明される。
どうもよくわからない。紙に書いてあるから、みればわかるだろう。もうそろそろ出かけないといけないのか。
道をうろついていると、途中でだれか知った人と出会った。
いま1時半で、集合時間は5時半くらいだったから、まだ時間があるな、と思い、ゆっくりする。
そのうちいつしか夕刻に近くなって、とにかく出かけるが、よくわからない。たしか長田高校とか、垂水高校とか言っていたが…とあせる。
気づくともう5時半に近い。もう間に合わない…そんなところで目がさめた。目がさめたときには、かなり鮮やかな印象が残っていたが、思い返すにも思い返せない曖昧な内容で、そのうちに色もあせてしまった。》

 どうしてこんな夢を見たのか?
 それはわからないが、長崎の「踏み絵」のことなどが関係してくるのかもしれない。
 宗教を選ばされて、その選んだ結果によって、裁かれるというような、そんな不安がかげを落としていたのかとも思われるが、内容から判断しようにも、何ともいえない、というのが実際のところ。



責められているような思い

 
 

 職場でも自分の存在の居場所がない。周囲の人たちと馴染めないし、自分だけ浮き上がっている。周囲の人たちの中に入り込もうとする意思がないし、第一そのような意思をもてない。

 事の上でも、なすべきことができていない、と感じることが多い。自分にできることはごく単純でたわいのないことばかりで、ちょっと困難な問題に当たると、たちまち無力感、悩みを感じ、精神が混乱して、「舞い上がって」しまう。

 

 今日もずっと先日からの懸案事項が頭にあって、課長にどうしようかといわなければならないのだが、言い出せない。
 ○×漁港の護岸の角落としを業者に注文すること。大したことでないことはわかっているが、自分にとってははじめてのことで、どうしたらいいのか、課長に聞いても結局自分で何とかしなければならないだろうから、その先困ったことになるかもしれないといった思いがあって、なかなかいえない。そのうえに一つ不確定要素がある。

HHH町の仮野漁港の角落としも2か所不明のものがあって、役場のAIDA氏に問い合わせたがその答えが返ってこない。AIDA氏のほうも忙しい身で、そう何度も問い合わせにくい… 今日電話したら今日・明日いないという。課長は一度彼にその指示を与えたがその後何もいわない。課長はほかにもっと重要な懸案や問題を抱えていて、こんなつまらないことに関わっている暇はない。しかし、ずっとそのことを意識しているのではないか、彼がそのことでいつ動き出すのかと思い、いらいらしているのではないか。そのうち再び指示がくるのではないか。彼は素早く片をつけてしまうべきだったのだ。こんなつまらぬことで、いったいいつまでぐずついているのか…

 

 課長に対して気遣うというか。ずっと課長から職務怠慢を責められているような思いがある、この気の病の本質はそこにありそうだ。「責められている」「当然自分の責任でやるべきことをいつまでも伸ばしている」そのことを課長がずっと意識している、という思いからくる精神的な苦しみ。

 何も大したことではない。若い人でも誰でも、ほかの人ならただちに片づけてしまっただろう。そんな意識もあるために余計に苦しい。

 

 これについて思い出されるのは、女三の宮だったか(光源氏の二番目の正妻)を身籠もらせた柏木が、その後光源氏に強く責められていると感じる苦しみが原因で、病に落ちて死んでしまった。あの感じがよくわかる気がすることだ。心の苦(恋の病ではなく、心の苦、自分に「責め」があるという思い)がもとで、病気になって死ぬ感じがわかる気がするのである。

 勿論彼自身が感じているものはそれほどのものではない。ただ、心に重くかかっている。無責任になれないし、かといって、責任を果たせない。

 


名前が思い出せない症候群

 

 事務所で同僚だった人の夢を見て、目が覚めてから、その名前を思い出そうとしたが思い出せない。もちろん、よく知っている人で、それ以降もときどき出会ったり、挨拶を交わしたりしたこともある。一日中思い出そうとしてもついにでてこない。職員名簿を引き出してきて調べればすぐにわかるのだが、そうするほどの必要もない。

 ひどいのは、この人の名前ばかりではない。

試みに、1年前に退職したときの直前まで身近に見知っていた事務所の同僚の名前を思い出そうとしても、思い出せない人がぞくぞくとでてきた。

これはこれこれこういう人だということは浮かぶ。顔もある程度。しかし名前だけはなぜか、いくら考えても、浮かんでこない。これはどうしたのだろうか。もちろん、ただちに思い浮かぶのは、痴呆化現象だろうかということだ。名前が浮かぶ人もあるが浮かばない人もある。しかし、浮かばない数が多すぎる

若い頃からそんな傾向がなかったわけでもない。というよりもかなり著しくあった、といってもいい。

だから毎日顔を合わせていて名前もよく知っている人の名前を思い出せないことがあっても、ぼけ現象だとは考えないできた。けれども、今日たまたま見た夢から何々君の名前が思い出せないことがあって、このことに気づいた。当然、思い出せて然るべき人の名前が浮かばない、しかもその数が少なくない。その部分がすっぽりと抜け落ちて白紙になったように思い出せないのだ。

 脳科学の本を読んだことから考えると、言葉に関係する部位は、まとまって別になっているようだから、その部分への脳細胞の通路が切断されたというようなことが起こっているのだろうか。

 そういえば、自分の意識、頭の状態がひどくぼーっとしていることが自覚される。おまけにこのところ肩、首筋の凝り(というよりも痛み)がひどかったり、喘息が悪化したり、体調が悪かったり、気分がよくなかったり、という状態。

 

◇次の日

 相変わらず人の名前が思い出せないまま。別に思い出す必要はない。

ただ、痴呆化のせいかどうか確かめたいのである。顔の感じや彼がいた場所、出会ったあれこれの場面は思い出せる。彼が足が悪くて杖に頼って歩いていたこと、県立病院ではSさんの同僚だったこと。そうしたことはもちろん記憶から少しも抜け落ちていない。ただ、名前だけが記憶の紙面から抜け落ちてしまって、空白になっているのである。

感触として、すぐそこまで近づいてくることもある。が、そこからどうしても進まない。何かのきっかけで、はっと思い出せることになるだろうとは思うのである。思い出してみると、案外何でもない、なあんだ、ということになりそうなのである。

 いろんな人の名前が思い出せなくなっている。漁湾課で同じ課だった新岡さんの名前も昨日から思い出せなくて、今ようやく思い出した。他の課の人の名前はほとんど軒並みに忘れている。思い出せる人の数はほんの少数だ。かかわりはあまりなかったものの、もちろん一年前までちゃんんと名前を知っていた人ばかりだ。さすがに同じ課だった人の名前は比較的容易に思い出せた。

 痴呆のせいでないといえるかどうか。

可能性として、考えられる一つは、1年間完全に仕事から離れて、今後仕事に関わる必要性がいっさいなくなったことによって、この部分の記憶を想起するルートが薄弱化したということ。必要のないことを覚えておく(すぐに想起できるるようにしておく)ことは、無駄であり、無駄なことは廃れていくのだ。そう考えることもできようか。

仕事関係の人の名の記憶の領域は、今後想起する必要の薄い領域として、生きた記憶から死んだ記憶へと移っていったのだ。

 しかし、それにしても、このところの自覚的な徴候(印象)として、頭(意識)のもうろう感、薄弱感が著しい気がする。意識的に頭を使うようにしないとまずいだろう。坂道を転げ落ちるように、老化が進行してしまうような気がしている。機敏に何かをするとういことができなくなっているのを感じる。

 

◇さらに次の日 続々と氷が溶けて

今朝、目が覚めて、例によって名前を思い出せない人の名前を探っていたとき、ある微妙な感じが開けて、「あ、これだ」と思い、やがて浮かんできた。大岡君という名前である。最初微妙な感じがあって、「宮岡」という名が浮かび、「あ、これだ。しかし、ちがう」と思うとともに、「これに近い」と感じられた。次に「大岡」という名に行き当たった。文字どおりスルスルという感じで、氷が解けるように名前が解けて表れた。不思議なのは昨日までまったく白紙のままだったほかの人たちの名前が次々と思い出せてきたのである。当然、思い出せて然るべき人たちの名前が昨日と一昨日は、まったく消えていた。今朝はそれが次々スラスラと思い出された。エノモト氏、タニさん、オガワ君、スギヤマ課長…

けれどもまだ想い出せない人たちがある。最後の事務所で、仕事上も密接に接触していた総務担当の人の名前がどうしても思い出せない。担当は途中で変わった。その二人とも思いだせない。あまり関係のなかった人の名が思い出せないのはもっともだとしても、毎日関係があった人の名が思い出せない。まだ、1年そこそこしか経っていないのに。

しかも、それが一人や二人ではない。しかし、これも自然なことで、必ずしも老化・痴呆化のせいではなかもしれない。もちろん、老化の影響はあるだろうが、そう目立ったものではないのかもしれない。

とにかく錆び付かないように、脳を意識的に使うようにしよう。

 


「公務員には向いていない」と繰り返しいうK※※氏

 そのあと、非常に若くして総務課長に昇進して保健所へ転任してきたK※※氏がたまたまそばにきたので、ぼくは彼に酒をついだ。
 彼とは同席したくない気持が強かった。なんとなく虫が好かないと前から思っていた。勉強家の事務屋で、いわゆる「やり手」なのだ。
 彼がぼくに「公務員には向いていない」と何回となく繰り返しいうので、ぼくも「うん、そのとおり…向いていない…」と繰り返していた。
 そばにいた山村女史が「そんなことはない……」といっていたが、K※※氏はさらにくどく繰り返しいいはるのだ。
 恨みでもあるのか、その夜ぼくが女性に人気があったので焼いているのか…… と思ったりもした。  
 彼はぼくをそう深く知るはずもない。
 勿論彼の言ったことは本音だろうし、ぼくも現実的な能力に欠けるところがあり、事務屋には向いていないことは自認している。 
 しかし、それを人からいわれるのは面白くない気持もある。
 またそれを面と向かっていうべきことではないだろう。公務員の仕事に向いていないからといって、やめることができるわけでもないし、それが事実であるとしても仕事はしていかなければならないのだから。
 若い男が年取った男に向かって「おまえは仕事ができないから、出世が遅れているのだ」といっているようなもので、非常に失礼なことでもある。そのときは別に何とも思っていなかったが、あとで今日夕方ころからそのことが繰り返し思い出されて、不愉快な気がしてきた。
 彼とはものをいいたくないし、なるべく顔も合わしたくないと前から思っていたが、余計にそう思うようになった。
「下らない男だ…」と考えるようになった。
 彼にはどうも人間的な魅力や幅が感じられない。ぼくの気質に合わない男だ。副所長と同じように。  考えてみれば、周囲にいる県職員のなかにも、ときどき不愉快なのがいる。
 そういうのが出世している傾向があるのも確かだ。 
 所長と比べるとよけいそう思う。ああいうタイプの人はほとんどいない……

 いや、ぼくはどうやら、静かで目立たない人、吹き溜まりにいて恵まれないタイプの人に魅力を感じるところがあるようだ。

歓送迎会。所長のおくりもの…

 昨日歓送迎会。転任先のM事務所と元の所属の保健所が同じ日に重なったため、まずM事務所の会へ顔を出し、1時間近くいてから抜け出して保健所の会のほうへ。

 M事務所は保健所とだいぶ雰囲気がちがっていた。

 固く窮屈な感じが支配していた。印象は暗かった。勿論にぎやかにしゃべりあってくつろいではいたが、その度合いがちがっているように感じられた。

 ぼくはいつも宴会のときは、席をたたずに一人で坐っているのだが(そして人が酒をついでくれたときに飲んだりしゃべったりするだけで、自分からは人のところへあまりいかないのだが)、昨夜は早く席を抜けなければならないこともあり珍しく酒をついでまわった。

 まず副所長のところへいって次に所長のところへ……

 所長はぼくが県に採用されて最初のころ、同じところ(近い課)にいたので、ぼくのことを覚えている。そのことをぼくは妻から聞いていたので、ぼくも知らん顔ができない気がしていた。

 ひどく気を使っていたのだ。彼に対する印象が悪くなり、彼がぼくに対して悪感情をもつようにならないかと。

 彼がぼくのことを知っているのでなかったら、ぼくは、彼を敬遠してなるべく近寄らないようにしただろう。彼がまだ何かいおうとしているときに、ぼくは話を切りあげようとしてしまった。それで一瞬気まずい感じになった。(とぼくは感じた。)
 あと味がよくなかった。
 それが昇進などに影響するとかどうとかいうのではない。そういう心遣いはまったくない。

 ただ、ぼくは人から悪意をもたれるのが嫌なので、そのことが後にちょっとした苦となって残った

 たいしたことではないが、そのことを繰り返し思ったりしている。

  その場を早めに辞去して、次の宴会場へ行くと、保健所(旧職場)の人々が賑やかにやっていた。

 あいさつが終わってもうかなり和やかで華やかな雰囲気になっていた。保健所は最初から非常にくだけて自由な雰囲気なのであるが。

 ぼくが入っていくと、さっそく所長(旧職場の所長)からのプレゼント贈呈があった。所長は、転出した人それぞれに、それぞれの人に合った(と彼が思った)本を送ったのだ。

 ぼくがいなかったので、ぼくだけまだだった。ぼくがいただいたのは、深沢七郎の「『空気』の研究」という題の文庫本だ。

 ぼくはその場の司会から一言いうようにマイクを向けられた。

 ぼくは女性たちにひどく人気があって、みんなぼくに注目してくれた。

 旅行などでもぼくがカラオケを歌うと、女性たちがいっせいにはやし立てたりしたものだ。

 なんとなくそういう雰囲気(おひとよしといったところ)がぼくにはあるのだろう。

 所長も《人徳》だといっていた。勿論所長にはさらに大きな人徳がある。みんなが彼に好意をもち、彼をしたっている。特に女性は。

 ぼくはごく短いスピーチを行った。長くは話せないし、話す気もない。しらけるだけだろう。

 昔中学生の頃、校長先生が転任のあいさつをした。そのとき「後ろ髪を引かれる思いがする」といった、という話をする。
 するとみんなワアーとはやし立てた。
「その校長先生は、後ろ髪がなかったのですが…」というとみんな大笑い。

 爆発的な人気……そのあと、ぼくの席に次々と女性たちが訪れて、いっしょにビールをついでくれた。それにたいしてぼくはあまり口が軽くなく、ただ「お世話になりました…」と一こというだけだった。何をいうべきなのか、言葉が浮かばないのだ。無理にいえばしょうもないことをいうに決まっている。

 所長は、「ぼくがそこに存在するだけで何かがある、そういうものをぼくがもっている」

といっていたような気がする。(「空気の研究」をぼくに送った理由。)

 勿論これは誤解だろう。

 普段ぼくは非常に陰気で目立たない、無口で無能な人間なのだから。

 大岡副所長は、ぼくに昇進のことしかいわない。

「わたしの力が至らなかってすまなかった… まあ頑張って早く課長になって… 」というようなことをいう。
 ぼくはそんなことはなるようになるだろうと思っているのだが。
 ぼくの評価があまり高くなかったのかもしれない。それはそれでしょうがないだろう。たしかにぼくは、期待されるような働きを示していない。また、目立とうという意欲も全くない。控え目で、無口で、おとなしすぎる。等々…

 ぼくは所長のところへいって、良寛や一休のことなどをちょっと話した。
 所長もぼくにはいろいろ興味をもってくれているように思う。それがぼくにはよく感じられた。

 ぼくもいつもは控え目なのだが、いろいろ彼に興味を感じていることを示した。

 彼はぼくに親近感をもっているようだ。似たところがあると感じているようだ。ぼくもそうである。

 (あとでいつものとおり、あのとき自分がいったことが気恥ずかしくなり、心理的に重荷になった感じもあった。たとえばユングやフロイトのことをいったりしたこと、所長は発想が豊富だといったりしたこと…)

若い連中がどんどん課長になっていくのを見ると

 若い連中がどんどん課長になっていくのを見ると、そういう若い人を見るのがどうも面白くない。というか、顔を合わせたくない気持がする。顔を合わせると余計な気遣いをしないといけないからだ。知らん顔をしていたら、こちらが相手の昇進を妬んでいるように取られるだろうから、なにかいわないといけないか、と思ったり気を使うのだ。
 
 しかし、そういうときには、ぼくは自分への誇りと自信を取り戻すべきだろうと思う。仕事など結局自分にとってはどうでもいいことではないか。
 むしろ自分のもっている《希有なもの》《貴重なもの》をこそ大切に育てていくべきではないか、と思うのだ。
 
 妻も毎日そんなことがひどく気になっているようだ。それで面白くない、県なんて詰まらない連中ばかりが昇進していくといったことをいう。
 
 現在の知事は若いからやる気十分で、若い能力のある人、やる気のある人をどんどん登用する方針をたてている。これからますますそうなっていくだろう。そうなれば、ぼくなどは取り残され落ちこぼれていくことになるだろう。
 
 しかし、そんなことを気にする必要があろうか。それはむしろ幸いなこと、さらにいえば名誉なことでさえありうる。
 
 仕事と自分は別である。仕事で目立たないということは、なんらぼく自身の欠陥とはならない。タカが仕事によって自分の価値を決めてはならない。・・問題はそれよりも大きな〈価値〉を自分がもっているかということだ。
 
 問題はそこにはない。ぼくが出世競争に遅れていくというところにあるのではない。それはどうでもいいと考えることが出来る。かえってなんとなく誇らしい気持さえわかないことはない。というのもぼくはそういうことにはほとんど無頓着だからだ。

 問題は、県に始めて入った20才代の頃とまったく変わらない。 
 依然として同じ問題が残っている。

 つまり〈自分は何ものか〉という問題。要するに自分は〈何者でもない〉
 〈全くの無〉だ。社会的な地位や身分はぼくには意味がないし、何の慰めにもならないが、
 しかしそれではそれを除いてぼくには何があるのか。〈何もない〉〈全くの無〉だ。
  
 まだ独身であった20才代の頃、ぼくは詩を作ったものだ。

  空虚な実りのない壁に向かって
  ぼくは毎日問いかける
  自分はなにものか?
  自分からはなにが生まれるか?
 
  答えはいつも簡単さ
  おまえはなにものでもない
  おまえからはなにもうまれない!
  こいつはまったく明快だ!
  
  ぼくに思考があるとしたら
  それは自分の不毛についてだ
  精神の救いようのない貧困について
  ぼくは憂鬱な確信に達する

  それからおもしろくもない顔をして
  自分を相手の永遠のにらめっこ
  岩ばかりの不毛の土地からみごとな花が咲いてきはしないかと
  ぼくは気長に待っているのだった!…
  
 やはりこれがぼくの原点だろう。
 〈岩ばかりの土地から、なんともいえない花が咲き出すのを気長にまっている〉

 これがぼくの有り方だ。
 そして花はきっと咲き出すのだろうか? 

 いや、咲き出すのを待つというまさにそのことに何かがあるのだろうか?


どうも厭な雰囲気のところ…… 新しい職場(転勤先)……

 昨日、新しい職場へ辞令をもらいにいってきた。どうも厭な雰囲気のところだ。

 というのも、所長が非常に細かく難しい人らしく、噂では「あんな腐った所長はいない」といった人らしい。

 所長から何人かの人々といっしょに辞令をもらった。
 その場に各課長がいて、どうもみな過度なほどに緊張して、所長にひどく影響されている模様だった。

 所長のあいさつは、ほとんど聞き取れないひとりよがりの声で(とういうのも人に聞きとれるようにしようという気持が全く感じられず、たとえ聞こえなくても聞き取るのがお前らの勤めだといった様子)、どうも恐怖感を与える。

 彼はぼくが県職に採用されたころ同じ民生部にいた人で、ぼくもよく記憶している。
 彼もぼくを知っているそうだ。彼がどういう性格の人だったかは記憶にない。妻から聞いた話だと、非常に陰険で嫌な人だそうで、福祉事務所の人皆がひどい目にあわされている(泣かされている)、ということになる。文章の細かいことに一々注文をつけてくるそうだ。所長ともなればそんな細かなことはいわないものだが。そういうことを聞いていたので、ぼくも彼には気を使い、何となく恐怖感をもったわけだ。


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